特集記事

理路雑然 /-108-

2018年04月21日(土)

特集記事

理路雑然

「他店より1円でも高かったらその場で値引きします」。家電量販店の売り場にあるノボリ旗によく見る。値引きの基準を他の店の価格にしたところがみそだ。量販店は原価はほぼ同じなので、価格競争しても利益が下がるだけで客を独占できる訳ではない。ノボリ旗のセリフは価格競争はしませんという意味だ。これを経済学では、値下げ競争を自制する「暗黙の共謀」と言うそうだ。お互いが価格を協定すれば、競争を阻害する「談合」と見なされ犯罪となる。「暗黙の共謀」は合法的に価格競争による共倒れをしないための知恵だ

▼自分だけの利益を優先しようとするとお互い一番不幸な選択になる。それで勝負がつけば独占できるのだが、その前に自分も痛手を受ける

▼ゲーム理論に「囚人のジレンマ」というのがある。共犯の2人が警察に別々の部屋で尋問され、どちらも黙秘を通せばともに刑は軽いが、もし一方が共犯だと証言をし、他方が黙秘を続ければ、証言をしたほうは釈放され、黙秘を続けた方は重い刑を受ける。また両者が自白した場合には若干の減刑がある。この場合、片方が自分の釈放を期待して証言をすれば他方もそうする可能性がある。その場合は両者が黙秘を通した場合よりも悪い結果となる。最良の選択は二人とも黙秘することだが、相手の裏切りを恐れて結果的にどちらも自白するというジレンマが生じる。自らの利益のみを追求している限り、必ずしも全体の合理的な選択に結び付くわけではないことを示している。こんな話は世間に多い。


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